収集することもアート行為。映画『ハーブ&ドロシー』

映画の紹介

先日、今秋公開予定の映画『おクジラさま』(佐々木芽生監督)の試写へ。
和歌山県太地町の捕鯨に関するシビアな内容だったのだけど、取材する相手にたいする視点に公平さや慈しみを感じたので、佐々木監督の他の作品も観たくなり、映画『ハーブ&ドロシー』をDVDで鑑賞。

1960年代以降のニューヨークのアートシーン(「現代美術の」と言い替えてもいいかも)に貴重な、アートをかなりの点数を収集していたことで知られるハーブとドロシーのボーゲル夫妻のアートと共に歩む生活をおったドキュメンタリー。

夫妻がワシントンDCにある「ナショナル・ギャラリー」に2千点を越える作品を寄贈していること(この美術館は奇遇にも、2人が新婚旅行で訪れた場所!)、アーティストとの交流、展覧会へのお出かけ、自宅でくつろぐ様子、アーティストやキュレーター、アートディーラーたちの証言なども含め、コンセプチュアルアートとは何ぞや?など、いまひとつ「現代美術」についてよくわからない人(ワタシですが)でもよくわかる編集がなされ、きっと、画面から伝わってくるハーブ&ドロシーのボーゲル夫妻のフレンドリーなお人柄もあるのでしょう、たいへん親しみを感じる内容。

見終わった後、思ったのは、夫妻がアートをコレクションする行為も「アート」んあんじゃないかな?ってこと。

作品が気に入ったら、アーティストのアトリエを訪ね、作品の変遷(=作家の歴史)に興味を抱き「全部見せてくれ」と言う夫妻。
アーティストが捨てた作品も、起き抜けに思考を動かすために描く小さな作品も目利きの2人は見逃さない。購入価格の交渉も自分たちで行う。

私はこの映画でボーゲル夫妻を知りましたが、1960年代以降のアメリカのアート界では著名な存在でテレビ番組でも、新聞、雑誌にもとりあげられたこと多数。

収集していた作品を展示する展覧会も開催され、コレクションの質が高いことでも評価を受けていた夫婦は仕事を退職し、年金で暮らす高齢世代に。

その姿をおうため、カメラを回し続けた時間はかなりのものでしょう。

90分に満たない時間で、アートが生活に根ざし、アートと共に歩んだ2人の人生を「伝える」行為にも、愛を感じました。

この作品、実は続編もアリ。
こちも近いうちに鑑賞する予定です。

関連エントリー
50年後に実るシニアの恋。映画『ジュリエットからの手紙』
音楽は認知症患者を目覚めさせる。映画『パーソナルソング』
宇宙人、地球行きたくないってよ。映画『美しき緑の星』
80代のカメラマンが主人公。映画『ビル・カニンガム&ニューヨーク 』
世田谷区の「認知症おうちカフェ キラリ会」へ。 足こぎ車イス体験も