孤食する高齢者の食育も視野に。日本人の伝統的な食文化の継承

2016年4月5日ニュースと考察

平成25年12月、ユネスコ無形文化遺産に「和食;日本人の伝統的な食文化」が登録されたのは記憶に新しいところ。
政府はその日本人の伝統的な食文化を継承する「食育」を若者、そして高齢者にたいして行っていく方針を打ち出しました。

 政府は18日の食育推進会議(会長=阿部晋三首相)で、2016年
度からの5年間を期間とする第3次食育推進基本計画を決定した。和食
がユネスコの無形文化遺産に登録されたことを受け、伝統的な食文化の
継承に向けた食育を新たな重点課題に位置付けた。食生活に課題が多い
若年層への働き掛けを強めるとともに、一人暮らしの高齢者が増えてい
ることを考慮し、多様な暮らしに対応した食育も進める。(中略)

  食文化の継承でも目標を掲げ、取り組む国民の割合を現状の42%か
ら50%以上にする。特に引き継ぐ側の若者の目標より引き上げ、現状
の49%から60%にする。JA女性部などの郷土料理などを伝える取り
組みが今以上に求められそうだ。

 (中略)

 子どもの貧困や高齢者の一人暮らしも食育の課題として浮上しており、
地域で人と一緒に食事をとる「供食」の場を広げていく。健康寿命を延
ばす食育の推進では、これまでのメタボリック症候群対策に加え、減塩
や高齢者の低栄養の予防にも力を入れる。

(日本農業新聞2016年3月19日(土)12版より抜粋)

今回の食育の方針には子どもや若年世代だけではなく、高齢者も対象に含まれています。
平成17年には「食育基本法」という法律が制定され、食育の推進に取り組んでいくことが課題となっていました。
今回の方針はその推進をより深めるということでしょうか。

ところで、ユネスコ文化遺産に登録されている和食ですが、改めてその定義を調べてみました。
その4つの特徴を紹介しましょう。(農林水産省HPより)

(1)多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重
日本の国土は南北に長く、海、山、里と表情豊かな自然が広がっているため、各地で地域に根差した多様な食材が用いられています。また、素材の味わいを活かす調理技術・調理道具が発達しています。

(2)健康的な食生活を支える栄養バランス
一汁三菜を基本とする日本の食事スタイルは理想的な栄養バランスと言われています。また、「うま味」を上手に使うことによって動物性油脂の少ない食生活を実現しており、日本人の長寿や肥満防止に役立っています。

(3)自然の美しさや季節の移ろいの表現
食事の場で、自然の美しさや四季の移ろいを表現することも特徴のひとつです。季節の花や葉などで料理を飾りつけたり、季節に合った調度品や器を利用したりして、季節感を楽しみます。

(4)正月などの年中行事との密接な関わり
日本の食文化は、年中行事と密接に関わって育まれてきました。自然の恵みである「食」を分け合い、食の時間を共にすることで、家族や地域の絆を深めてきました。

日本の食文化は、日本の四季がもたらす感性や人々とのつながりを大切にする時間が継承されたものでもあります。
一人暮らしや核家族化などで、高齢者が孤食を続けると、食事の時間が寂しくて味気ないものとなり、地域や家族とつながりが薄らいでしまうかもしれません。

「食」は人間の三大欲求の一つ。
食事は家族や友人知人との大切な団らんのひとときです。
お腹も心も満たしてくれる食事を皆でとることで、心身ともに健康になります。

ぜひ、食文化の継承とともに、高齢者の食育(供食)も推進し、食をとおしてのつながりが多くの人を幸せににすることを伝えたいと思います。

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